実はこのマンガ、気になっているのだす。
なぜなら、能楽師が主人公だから。

1年に1回は薪能を観ているんだけど、以前観た「恋重荷(こいのおもに)」という
演目を題材にしたストーリーがあるらしいのだ。

能「恋の重荷」…かなり悲惨なストーリーである。
舞台は白河院。
身分違いの若い娘(女御)を好きになったばっかりに、弄ばれて
女を恨みながら死んでいった(自殺した)庭師の老人が亡霊となって現れ、
延々と恨みつらみを語るという、「聞くも涙、語るも涙」な悲惨バナ。

弄ばれるといっても、あんなことやこんなことができたわけでは
当然なく、
「『恋の重荷』(女御が用意した重い荷物)を持って庭を歩けば、
顔を見せてあげてもいいわよ。うっふん」と言われてバカ正直に信じた老人が、
荷物を持とうとするけれど、その荷物が重いのなんのって。
中に何を入れたか知らないけれど、老人が全然持ち上げられないほど
荷物を重くした女御のいぢめっぷりが泣かせます。

ときは平安である(でいいんだよね?)。
身分の高い女人とは、人前に顔を出さないもの。
もし、若い公達が「おれ、××の女御の顔見ちゃったー♪」と言ったらば、
それはつまり「おれ、××の女御と寝ちゃった」と同義なのである。
「女御の顔を拝めるかも!」と思った老人の喜びはいかばかりか。
(つーか、身分が違う女の、しかも若い女の顔が拝めるなんて、
 そこで「あれ? そんなうまい話ってあるの?」っと思わんかい、老人!
 と思わないでもないけれど、きっとあんなこと言われて舞い上がっちゃった
 に違いない。
 持ち上げられて、落とされた老人の心中、察するにあまりあるのである)

で、怒った老人は憤死→鬼(怨霊)になって現れて、さんざん恨み言を
言ったあげくに女御を襲おうとするんだけど、
なんだか知らないけど(←ストーリー忘れた)気付いたら、
女御の守護神になっちゃうのである。
まー、終わりよければすべてよし、と言えないこともないけれど、
そうするには陰湿がすぎる話だ。

能(芸術)なのでとやかく言うつもりはないけれど、
内容的には「女御、あんた、小学生(それも低学年)のガキか」と
言ってしまうくらい、いぢめ方はアホらしい。
しかし、時代が違えば、そんないぢめに遭うことは、耐え難い屈辱だったわけだ。

とまー、つらっと読むとアホらしい話ではあるが、
その中には、恋愛をしているときに人間が抱く希望や不安、
失恋につきものの落胆、さらには老人の恋愛、改心、許し、安堵といった
人間の感情をテーマにした表現がてんこ盛りになっていて奥が深い。
奥が深すぎて、能初心者の眠気を誘うストーリー展開なのである。(笑)

そんなわけで、ド素人の私でも、その奥深さをちょっとは理解できるかも、と
期待させてくれるマンガがこれなのである。

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