深海魚と代筆と私

2001年12月28日
(この日記は12月19日のでーさんの日記と併せてお読みください。)


先日でーさんの日記を読んでいたら、
お菓子やドリンクに付いているおまけフィギアに対する
でーさんの愛が切々と語られていた。
その中で、でーさんがMIUという海洋深層水の
付録・深海魚フィギアについて言及していたので驚いた。
実は、そのでーさんが愛する深海魚フィギアを
私は2体所有していたのである。

私は自分の深海魚に対する愛情について考えてみた。

 ……里子に出した方がいいかも。

深海魚フィギアにとって、ここにいるメリットは何もなかった。
なにせ、深海魚だというのに、西日がさんさんとあたる
私の枕元に放置され既に埃を被っているのである。
そのうち、ゴミとしてその一生を終えることになってしまう。
そんな将来が丸見えだった。

   里子に出そう!

その方が深海魚フィギアにとっては幸せである。
早速私はでーさんに連絡をとった。
深海魚を手にしたでーさんは殊のほか喜び、
後日日記上でその喜びを存分に表現してくれた。
あの深海魚達を床の間に飾ってくれるというのだ。

でーさんの深海魚に関する考察にはまったく頭が下がる。
私が送った2体のうち、1体の深海魚が思いつめた表情をしていたことを
教えてくれたのもでーさんだし、もう1体の深海サメが体を
美しいまでにくねらせていたのに気付かせてくれたのもでーさんである。

まぁ、何はともあれ、人の喜ぶことをしたあとは
気持ちいい。
気持ちいいはずである。


-----------

ところが、でーさんの喜びをよそに
私は複雑な気持ちになっていた。

事の起こりはこうである。

私「------というわけなのよ。
  いや〜、喜んでもらってよかった。
  うちにいたらゴミになっちゃうだけだもんね〜。」

イザナミ「喜んでくれて、本当よかったわね〜。」

私「ところで、さっきフィギアを送るときに
  手紙を付けようと書いてたんだけどね。
  全然字が上手書けなくなっちゃってて、びっくりしたよ。
  私ってあんなに字がへたくそだったかしらな〜んて
  思っちゃった。
  書き直しなんてしてたら、きっと買ってきた便箋全部
  使い切っても足りないくらいだね。
  最近、手紙はメールで書くし、
  書類は打った物をプリントアウトするから
  鉛筆とかボールペンなんてほとんど使わないもんね。
  たまには書かないと字ってすぐ下手になるね。」

私はでーさんへの申し訳なさと後ろめたさを隠すように
わざとあっかるく言ってみた。

イザナミ「あら、あなたは元々……」

    (心なしか、イザナミの目が三日月に見えた。
     どうやら笑いをこらえているようである。)


そう。(とほ〜い目)
元々私は字を書くのが上手ではなかった。
小学、中学、高校そして大学時代と
字の汚さは私のコンプレックスの1つだった。
しかし、それは「多少人より下手」程度の下手さだったのである。
けっして「読めない」ほど汚いわけではなかったはずだ。

確か就職活動のときに、OG訪問をした先輩から
もらった手紙の字があまりにも美しかったので、
一念発起して字の練習をした覚えがある。
お陰で、私の字はかなり見れるようになった。
所詮は付け焼刃なので、気を抜くとすぐ前の状態に戻ってしまうのが難点だが。

そういえば、こんなエピソードがある。
就職したばかりのとき、親元を離れていたので
私はしょっちゅう親姉妹に手紙を書いていた。
(いや、しょっちゅうというのは嘘である。 汗)
そんなある夏休み、姉が観光がてらうちに泊まりにきて
こう言ったのである。

姉「どんな友達に手紙を代筆してもらってるの?」

私「は?」

姉「あんたがあんなに字が上手なわけないでしょ。
  どのお友達? 紹介しなさいよ。
  ご挨拶しなきゃ。」

この姉は、私が就職活動をしていた時分には既に嫁に行っていて、
必死こいて字を練習していた私の姿を見ていないのである。
あまりにも「修行前」と「修行後」の筆跡が違いすぎるので、
きっと私が誰かに手紙を代筆させているに違いないと踏んだのである。
ひどい話である。

ここで、さっきのイザナミとの会話に戻るのである……


私「そういえば、私おねーちゃんに『代筆頼んでるでしょ』って
  言われたことあるよ。
  ひどいよねぇ〜。
  そこまでするかっつぅ〜の。」

イザナミ「確かにあなたってば、本当にがんばったわよねぇ。
     お母さん、あんなにあなたの字がきれいになる
     なんて思いもしなかったわ。
     
     ……あら。
     そういえば、あなた代筆してもらったことあるわよ。」

私「え? 何それ?? 覚えてない。」

そう。
覚えていない。
どんなに恥ずかしくても、
私は自分の字でずっと勝負してきたはずである。
(なんの勝負だと聞かれても困るが。)
それなのに、それなのにっ!!!
母までもがっ!!!
そんなこと言うなんて……。

イザナミ「ホラ、あなた小学校1年だか2年のとき、
     読書感想文で賞を取ったじゃない。」

いかにも。
それは覚えている。
市で某かの賞を取ったという、立派な「過去の栄光」である。

イザナミ「そのときにね、あなたの感想文をね、
     校内に張り出そうってことになったのよ。
     原稿用紙に書いた直筆のをね。」

私「それがどうしたのよ。
  それ、まだとってあるじゃない。
  あれ、私が書いたんでしょ。」

イザナミ「それが、違うのよ。」

私「え″? え″? 」
 (つつつーーーと汗が背中を伝う)

イザナミ「ある日、先生が家にやってきておっしゃったの。
     本来ならば本人に書いてもらうんだけど、
     あなたの字は……その……あまりにも……
     下手くそで誰も読めないから、他の子に代筆を頼んでもいいかって。
     保護者の許可が欲しいって。」

私(ガーーーンガーーーンガーーーンガーーーン)

XX年目にして始めて知った事実。(というか、気付いた事実。)
私はあまりの衝撃に気を失いそうになった。

そ、そんな……私の人生は……代筆で塗り固められた人生だったなんて……。
ショックーーーーーーーー。


しかし、それにつけても、
人生最初で最後の晴れ舞台で代筆をしてもらった私の立場もないが、
他人の作品の代筆をすることになったその子の立場は……もっとない……かも。
それを考えると、複雑な気持ちにならざるを得ないのだった。

あ、年賀状を書かなきゃ。
どよ〜ん。

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