目が覚めると地上には「イタリア」が広がっていた。
イタリアは、畑、土のレンガ色、深みを帯びた針葉樹の緑色だった。
陽光があたって陽気に見えるのだが、レンガ色、深緑それだけを個別に取り出すとけっして明るい色ではないことに
気付いた。
なんか、不思議だった。
2つ合わせると明るく見えるのだ。

無事乗り換え地のミラノに着き、トランスファーカウンターで
乗り換えの手続きをとることになった。
カウンターに行って、順番待ちをしていると
前方はなにやらトラブっている様子。
どうやら数人の客の予約がキャンセルになっているようである。
う〜む、大変やな〜と思いつつもそれを尻目に
自分の番でチケットの予約票を差し出すと
自分もそのうちの1人らしいことが判明した。
いつまでたっても、係りの人は私に搭乗券をくれないのだ。
おまけに、どんどん私は後回しにされて、
あとから来た客がどんどんゲートに向かって去ってゆく。
私はあせり始めた。
なにせ、飛行機到着から次の乗り継ぎまでの時間は
きっかり1時間半しかとっていなかったからだ。
実質次のゲートが締め切られるまで時間は1時間。
その間に飛行機降りて、乗り継ぎチケット発券してもらって、デューティーフリーで頼まれ物を買い物
して……時間がないじゃん。

私「あの〜、私さっきからず〜っと待ってるんですけれど。
  早く搭乗券ちょうだい。」

係官「もうちょっと待ってください。」

私「さっきからず〜っとそう言われて、ず〜っと待ってるんですけれど。
  せめて何があったか説明くらいしてください。」

係官「どうも手違いでキャンセルされているみたいです。」

私「ならば、早く取り直してください。
  その分のお金はちゃんと払ってあるんですから。」

係官「ですから、もうちょっと待ってください。」

というなり、そのイタリア人の係官は私のチケット予約票を机の隅においやると
別の仕事を始めたのだ。
イライラムカムカしているところに、日本人職員が
トランスファーカウンターに合流してきた様子が見て取れた。
すかさず私は、

「すみません。私、もう20分(←誇張)も待っているんですけれど
 早く搭乗券をください。」

日本人係官「申し訳ございません。
      本日はコンピュータの調子がおかしくて。
      ただ今発券いたしますので。」

ようやく、チケットをゲットした私は嫌みの1つでも言いたい気持ちになっていたのである。

私「あの〜、リコンファームはいらないって聞いていましたけど
  やっぱり必要ですか?」

日本人係官「いえ、今ので大丈夫ですから。
      リコンファームは必要ございません。」

私「わかりました。どうもありがとう。」

無事に搭乗券を手にした私は急いで買い物を済ませ、
ゲートに向かった。
そこにはめちゃくちゃちっちゃい飛行機が泊まっていた。

あ〜、あの飛行機に乗るの?
私はちっちゃい飛行機が苦手である。
ましてやそれがイタリア人のパイロットによって操縦されるなんて。
やめて〜、と絶叫した気持ちを押さえて、飛行機に乗り込んだ。
以前イタリアーロンドンをブリティッシュエアウェイで
飛んだことがあるのだが、その時のパイロットがイタリア人だったのである。
飛行機もジャンボジェットではなかった。
今思い出してもお尻が痛くなるだが、ど〜したら
そんなに手荒に着地できるのだ?ってなくらい
荒い着地だった。
着陸直前、陸地が迫っている間も、機体は揺れに揺れて
なんだかこのまま水平を保たないまま突っ込むのではないかと思われたのだ。
しかも、その日は風がなかったと記憶している。

ところが、
思ったよりフライトは快適だった。
パイロットはイタリア人ではなく、ポーランド人だった。
機内のスナックというか軽食もまぁまぁイケてたし。
ほっ。

なんだか、ポーランド行きの飛行機に乗った瞬間から
場の空気、というか色が今までとは違うものになっていたのに気づいた。
人々の色が薄いのだ。
イタリア人の、ラテンの濃さとアジア人の黄味がなくなっていたのだ。
ヨーロッパに来たんだという実感が急に湧いてきた。

空から見るワルシャワは、さながら光の洪水のようだった。
これは全く予想していなかった。
きっと街中は光がなくて、空港の滑走路のラインが目立っちゃうんだろうくらいに思っていた。
私の頭の中のポーランドはいまだ共産主義を引きづる暗〜い土地だったのだ。
電球は切れたら切れっぱなし、とかね。
光の洪水を見たとたん、なんかホッとした。

空港に着いた。
空港は思ったより狭かった。
でもまぁ、これくらいが外国人にはありがたい。
あまり広い空港というのも考えものだ。
私はキョロキョロを辺りを見回した。
迎えがきているはずなのだ。

やっと、マーちゃんをみつけ、近づいていった。
が、なにか様子が変である。
マーちゃんはなにやらブツブツ独り言を言っているのである。
ヤバい。
ここで頼る人はマーちゃんしかいないのに、マーちゃんはもしや……。
よく見ると、マーちゃんの手には携帯電話が握られていた。
そして、耳にはイヤホン、口元にはマイク。
奴は電話中だったのだ。

マーちゃん「ごめん、ごめん。
      待ってたら、電話がきちゃって。
      今おばさんと話してた。」

いや〜、よかった。
正気だ〜。
もう、こんなところで遠〜い場所で人を不安のドツボに突き落とさないでくれよ〜。

というわけで、長いフライトは終わったのであった。

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